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「マス」の時代

近代社会は、工業化によって大きな発展を遂げた。第2次産業革命である。その時、発明された機械や動力は人を肉体的な労働や移動から解き放ち、知的労働とグローバル化を推し進めた。 第2次産業革命について、先日87歳で亡くなった未来学者のアルビン・トフラーは、著書『第三の波』の中で、こう説明している。

第二の波の社会は産業社会であり、大量生産、大量流通、大量教育、マスメディア、大量のレクリエーション、大衆娯楽、大量破壊兵器などに基づくものである。それらを標準化と中央集権、集中化、同期化などで結合し、官僚制と呼ばれる組織のスタイルで仕上げをする。」

第四次産業革命の到来

しかし、我々はすでに次世代の革命を目の当たりにしている。  第二次世界大戦後に迎えた、世界のあらたなフェーズ――インターネットとコンピューティング技術に代表されるデジタル化による、第四次産業革命である。

このデジタル革命は、言うまでもなく我々の生活を大きく変えた。物質が0と1に置き換えられ、人は物質的な壁を超えることができるようになり、「マス」という概念に基づいた観念は、今や影響力を失い、その存在感は日に日に薄いものとなってる。

メディアは、その象徴的存在の1つである。インターネット以前の時代は、情報が最大多数に最適化された、まさに「マスメディア」が隆盛を極め、時代を謳歌していたが、インターネットの台頭で、あらゆるメディアは個性を持ち、分散化した。

第三次産業革命が「マス」であり、かつ「中央集権的」「官僚的」であるならば、第四次産業革命は、「パーソナル」であり「分散的」「市民的」だ。

医療の第三の波

だが、医療においては、この第三の波は、なかなか到来しなかった。要因には、競争が少ないこと、命を扱っていること、規制が多くあること、法改正への抵抗勢力など様々であるが、現在、その壁を超えて、大きな波が来つつあることも、また事実だ。

DNAの二重羅線構造を発見し、ノーベル生理学・医学賞を受賞した、ジェームズ・ワトソン氏が進めた「ヒトゲノム計画」によって、2003年にその全貌がようやく判明した、人のゲノムの全塩基配列。このゲノム解析が、空前の盛り上がりを見せている。

世界各地で遺伝子事業をすすめるベンチャー企業が立ち上がり、MIT発表の「世界で最も優秀な企業トップ50」では、9位にスパーク・セラピューティックス、7位に23 and me、3位にイルミナと、上位10位に遺伝子事業を手掛ける3社がランクインした。

2012年のノーベル生理学・医学賞を受賞したことで、一躍注目をあつめたiPS細胞。応用例として、再生医療の分野で、現代の最大の病の1つとされるガンや、不治の病とも言われるパーキンソン病への新たな治療法が期待されている。  現在、注目を集めるこうした医療技術は、トフラーの唱えた第三の波に、非常にアナロジーを持って語られる。

従来は最大公約数に向けてされていた治療はどんどん小単位になり、個別化されようとしている。つまり、従来の最大公約数に向けた寡占と集約の「マス」向けの医療から、ミクロへ。まさに「バラエティー」があり、「分散的」であり「市民的」な医療に進み始めているのだ。

医療という枠を超えて

波が来ているのは、既存の医療分野だけではない。現在、世界のテクノロジー企業の多くが、「ヘルスケア」と呼び、医療分野に参入し始めている。  IBMはヘルスケアをその注力分野の1つに据え、コグニティブコンピューティングシステムのIBM Watsonを利用し、様々な取り組みを行なっている。

また、人類の手の中を2分している、AppleとGoogleはそれぞれ、「Health Kit」「Google Fit」と、活動量や心拍数などの生体情報が集まるプラットフォームを展開し、今度は人類の健康情報を奪い合っている。

これらの動きは、これまでは医療という文脈ではあまり語られなかった領域である。

起こっているのは、これまではコントロール不可能な変数と考えられていたものが、コントロール可能な変数と捉えられ始め、生活全ての行動がデジタル化されヘルスケアの領域になっているという現象であり、そのデジタルな情報を活用したサービスやビジネスが世界中で数多く立ち上がっている。

PULSE

Pulseは、こうした医療のデジタル革命をテーマにした、まったく新しいウェブメディアとして立ち上がった。

デジタルの時代に求められるマスではない情報――最新のニュースから、研究の最前線まで――デジタルテクノロジーによって起こる医療の変化を、現在の医療がカバーする領域を超えて最前線から届けていく。

結びに

"Keep one’s finger on the Pulse of 〜" という、日々刻々と変わり続ける状況を常にキャッチアップし続けることをいう言葉がある。  まさにここPulseが、ウェブの世界から、世の変化を常に伝え続ける場であり、変化のPulseを広められる場であることを目指して。