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大塚製薬株式会社が、近赤外線(IRA)によるヒト表皮細胞の増殖抑制作用とそのメカニズム解明についての研究成果を、"Infrared-A Irradiation-induced Inhibition of Human Keratinocyte Proliferation and Potential Mechanisms"として、光生物学領域の専門誌「Photochemistry and Photobiology」の電子版にて発表されました。

皮膚の表皮は常に新しい細胞に入れ替わっており、これは「表皮ターンオーバー」とよばれています。表皮ターンオーバーの周期は、加齢やその他の要因により、表皮細胞の増殖活性が低下することで乱れます。太陽光により進行する光老化(図1)もその要因のひとつとして知られていましたが、メカニズムの詳細については明らかにされていませんでした。

大塚製薬は、健やかな肌には表皮ターンオーバーの維持が重要であると考え、太陽光がおよぼす表皮細胞の増殖活性への影響について研究を進めてきました。その中で、真皮の光老化を促進すると考えられてきた近赤外線(IRA)に着目したところ、細胞周期の制御に中心的な役割を担っている細胞内シグナル分子*1である mTOR*2 complex 1(以下、mTORC1*3)の活性を阻害することで、表皮細胞の増殖活性を低下させることを発見しました。さらに、近赤外線(IRA)がmTORC1活性を阻害する分子メカニズムには、少なくとも2つの経路が存在することが明らかとなりました(図2)。また、ヒト皮膚モデルに近赤外線(IRA)を照射したところ、表皮細胞の増殖活性を抑制する結果が得られました(図3)。

以上のことから、太陽光に含まれる近赤外線(IRA)を防ぐことが表皮細胞の増殖活性を保ち、健やかで若々しい肌を保つために重要な表皮ターンオーバーを維持することに繋がると期待されます。


【近赤外線】
皮下組織にまで届き、太陽光の中で最も肌の奥深くにまで浸透する性質を持っています。紫外線と比較すると、光老化への影響については研究が進んでいませんでしたが、近年では、コラーゲンやエラスチンを産生する線維芽細胞に対して影響を与えることでシワやたるみにつながることが指摘されています。今後、近赤外線の光老化への関与が明らかになるにつれ、紫外線だけでなく、近赤外線への対策がますます求められていくと考えられます。
【紫外線A波(UVA)】
真皮まで届き、肌のハリを保つために重要なコラーゲンやエラスチンを壊してしまいます。また、これらを作り出している線維芽細胞に対しても損傷を与えます。そのため、肌を内側から支える真皮の力が弱くなり、シワやたるみにつながると考えられています。
【紫外線B波(UVB)】
表皮でほとんどが吸収され、細胞の損傷や炎症を起こすことで火傷のように赤くなったり(サンバーン)、メラニン色素が沈着してシミやソバカスの原因になったりします。また、エネルギーが強いため過剰に浴びることで皮膚がんの原因にもなると考えられています。

メカニズム1: 近赤外線(IRA)が、表皮細胞内に「ストレス顆粒*4」を形成することで、mTORC1の活性を阻害することを明らかにしました。
メカニズム2: 近赤外線(IRA)が、mTORC1の上流にある「Akt*5」という細胞内シグナル分子の活性を低下させることで、mTORC1の活性を阻害することを明らかにしました。

参考

*1 細胞内シグナル分子:細胞外の増殖因子、ホルモン、神経伝達物質などによる刺激を細胞内に伝達する分子である。
*2 mTOR:mammalian target of rapamycinの略。細胞内シグナル分子のひとつである。
*3 mTORC1:mTORを核とした細胞内シグナル分子複合体である。成長因子、アミノ酸、エネルギーの状態に応じて、細胞の増殖、タンパク質合成、代謝などの調節に中心的な役割を果たす。
*4 ストレス顆粒:ストレス刺激(低酸素、熱ショック、ウイルス感染、砒素など)に応答して形成される細胞質内構造体であり、細胞が持つ"ストレス適応機構"のひとつとして知られている。
*5 Akt:細胞内シグナル分子のひとつである。細胞外からの様々な刺激を受けることで、mTORC1の活性化調節を行う。
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