PULSE TALK 第1章

IBMワトソンが話題となったきっかけはなんと...?

西野均
日本アイ・ビー・エム株式会社 研究開発 ビジネス開発部長
2017年3月7日
明治維新。横浜と新橋の間で陸蒸気(蒸気機関車)対人が乗った馬の競走があったという。この時の結果が「馬が勝った」という話が残っている。
先端技術対人力。将棋もチェスも囲碁もそろそろ先端技術が勝利をおさめるようになってきたようだ。アメリカのテレビのクイズ番組に出て人間をやっつけたことで脚光を浴びたアイビーエムの人工知能テクノロジー「ワトソン」は果たして人力を超えるのか?
pulseを読んでいる人は知っている。
人工知能による便利な時代がやがてくることを。馬よりも内燃機関の方がはやいという時代は「馬が勝った」すぐ後に来てしまった。「時代は変化する」ノーベル賞作家のボブ・ディランも言っている。
昨年命未来フォーラムで登壇された西野均さんのお話を聞いてみよう。

そもそもAIとは何か?

1番目は、文章であるとか(論文の解読など)、人が”やっていること”(将棋とかチェスなど)、”言っていること”をコンピュータが理解する(チャットボットなど)ことです。
 
2番目は、莫大なデータの中から必要な情報を指定すると取り出してくることです。
 
3番目は、理解したり探したりすることを結果とそれに対する正解をコンピュータが経験として学習して何らかの予測に使えることです。

AIは一般にArtificial Intelligence(人工知能)と解釈されていますが、IBMではAugmented Intelligence(拡張知能)つまり、人間の知識を拡張し増強するものととらえ、こうした技術を活用したソリューションをコグニティブ(経験的知識に基づく、認知の)・コンピューティングと、我々は呼んでいます。

機械学習とか、解析の部分だけを取り出してAIと呼ぶ場合がありますが、IBMにおいては、言語処理や画像処理、その手のもの全部を含めてAI技術と呼んでいます。

従来のコンピューターのように人がルールを作る方式ではなく、実際に起こっていることからコンピューターが自らルールを作りそれを学習する機能を持っている。その点が大きな特徴であり、現時点でのAIと呼ばれるものになります。

AIが注目を集める背景

もともとIBMのワトソンが世の中に出てきたのは、2011年ですので、今から5年ぐらい前のことになります。アメリカの「Jeopardy!(ジェパディ)」というクイズ番組で、人間のチャンピオン解答者に挑戦して話題を呼びました。


なぜ勝てたかというと、当時すでにデータとして、インターネット上にある新聞記事からウィキペディア、聖書、歌詞など、多くのものがデジタルデータになっていたからです。(データがデジタル化しているとしてないではコンピュータにインプットする作業量は雲泥の差になります)

それを全部ワトソンに覚え込ませ、さらにクイズ番組の過去の問題と答えを経験として学習させ、精度の高い答えを見つけることを実現させたことにあります。

紙で保存するデータは、現在、情報のデジタル化がどんどんなされてきています。コンピューティングパワーもどんどん増大してきて(編集部注:「現在のスマホは、25年前のコンピューターの値段の10億分の1の大きさで10億倍の性能。25年後のコンピューターは今の値段は10万分の1大きさは血液細胞と同じ大きさになる」未来学者 レイ・カーツワイル)非常に安価で大容量のメモリやストレージを持ったコンピュータが出てきています。

ただ、「ディープラーニング(深層学習)」とか「ニューラル・ネットワーク(神経回路網)」とか、とんでもない革新的技術が出てきたように見えますが、コンピューター自体は、“多くのものの中から項目を決めて、重み(関連の強さ・重要性)を計算している”高速に地道に計算をしている。なので急に出現した新しい技術というわけではないと考えています特別、ものすごく新しいことをやっているわけではありません。

まとめると、①世の中にいわゆるビッグデータと呼ばれるようにデータが豊富にあって、②コンピューティングパワーがどんどん進んできた。①を②の力で高速に計算する。いままでできなかったことができるようになったので、AI、AIと騒がれ始めたというのが現状だといっていいでしょう。

次回

第2章:AI活用に欠かせないもの

第2章:AI活用に欠かせないもの
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西野均

日本アイ・ビー・エム株式会社 研究開発 ビジネス開発部長
82年慶応大学数理工学科卒
ICタグシステムの研究開発に携わり、物流や生産現場での効率化につながる技術推進に大きく貢献。現在はワトソン研究開発のエキスパート。