ポーラ・ハモンド: 癌との闘いに新たな強力な武器を | TED Talk Subtitles and Transcript | TED.com

TED Talk: 癌は非常に賢く、順応性の高い病気です。医学研究者であり教育者でもあるポーラ・ハモンドは、癌を倒すために、私たちは新たに強力な攻撃手法を必要としていると語ります。

癌が抗がん剤を追い出す

癌は私たちに深刻な影響を与えます。何度も何度も再発するタイプのもの、浸潤性の高いもの、薬剤耐性のあるもの、考え得る最良の薬剤を用いた治療もものともしない癌などは特にそうです。そこで分子レベルで操作を行い、最も小さな規模でのアプローチにより最も攻撃的なタイプの癌との闘いにおいて胸を躍らせるような新しい方法がもたらされるのです。

癌はとても賢い病気です。しかし、幸運なことにいくつかの癌についての対処法はすでに薬剤や手術方法が確立されていて、比較的よく分かっていると言えます。ところが、これらのアプローチに反応せず、抗がん剤による猛攻撃の後でさえ、撃退できず再発するような種類の癌もあるのです。

癌の深刻な強さ

このようなとても攻撃的な癌は、漫画の超悪玉に例えられるでしょう。賢く、適応性が高く、しぶとく生き続けることが大得意なのです。最近の超悪玉がそうであるように彼らの特殊な力は遺伝子の突然変異によって生まれました。遺伝子が腫瘍細胞の中で変異し、新たなそして想像もしなかった生存の方法をがん細胞に与えてしまうのです。そのせいで最良の抗がん剤を投与しても、がん細胞を倒せなくしているのです。

一つ例を挙げてみると、がん細胞へ抗がん剤が働きかけようとも、何らかの影響がある前に抗がん剤を追い出すという遺伝子によるものがあります。想像してみてください。細胞が巧みに抗がん剤を吐き出すところを。これは単に悪玉である癌の手中にある遺伝的策略の一例に過ぎません。すべて遺伝子の突然変異のためです。
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希望の「siRNA」

とてつもない特殊能力を持った超悪玉がいるのです。そのため私たちには新たに効果的な対処方法が必要となります。実は遺伝子はスイッチをオフにする−つまり機能をストップさせる−ことが出来るのです。鍵となるのは分子のセットとして知られる「siRNA」です。「siRNA」とは細胞に特定の遺伝子をブロックさせる遺伝子コードの短い配列のことです。どのsiRNA分子も細胞中の特定の遺伝子を オフにさせることが出来ます。どのsiRNA分子も細胞中の特定の遺伝子をオフにすることが可能なのです。その発見から何年もの間、科学者たちはこの遺伝子ブロッカーをいかに医学の分野に適用できるかという事にとても熱心でした。

しかし、そこにはある問題がありました。siRNAは細胞の中でよく働きますが、私たちの体内の血流や組織の中に存在する酵素に晒されると数秒以内に分解されてしまうことです。体内での旅路では最終的な目的地であるがん細胞の中まで何かに包まれて保護されなければならないのです。つまり、酵素に触れないようにしなければならないのです。

酵素からいかに守るか?

そのようにすることを私たちは目指しました。まずはがん細胞に遺伝子ブロッカーである「siRNA」を投与することにより、癌を生存させる遺伝子を抑制します。それから抗がん剤で完全に打ちのめすのです。ですが、どうすればこれを成し遂げられるのでしょうか? 分子工学を用い、実際に、血流を進んでいくことが可能な効果的な媒体をデザインしなければなりません。血流を通るのと腫瘍組織に浸透するのに十分なほど小さくなければなりません。そして、がん細胞に取り込まれるようにとても小さいものでなければならないのです。これを成功させるには、その物質の粒子を人間の髪の毛の約百分の一ほどのサイズにしなければならないのです。

では、どのようにこの微小な粒子を作り上げていくのでしょうか。初めにナノ粒子の核から始めます。化学療法の薬を内包したとても小さなカプセルがあります。これは、実際に腫瘍の命を絶つ薬−抗がん剤−なのです。これをとても薄いナノメートル級の「siRNAブランケット」で包んでいきます。これが我々の遺伝子ブロッカーです。「siRNA」は強く負に帯電しているため、正電荷を帯びたポリマーの層により保護しなければなりません。この2つの反対の電荷をもつ分子は、引きつけ合いくっつくのです。これにより保護層は「siRNA」が血流の中で分解してしまうことを防ぐための保護層を作るのです。さぁ、もう少しで完成です。
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もう一つの大きな障害

ですが、もう一つ考えなければいけない大きな障害があるのです。事実、これが一番大きな障害です。この強力な武器をどう目的に到達させるのか、という問題です。どんな有効な武器も、標的に照準を向けなければ意味がありません。すなわち我々はこの強力な武器の照準を腫瘍に巣くっている悪玉細胞に合わせなければならないのです。

しかし、私たちの身体には自然に免疫防御システムが備わっており、細胞が血流にのって巡り、よそ者を見つけ出し破壊し除去するのです。おわかりでしょうか? このままでは我々のナノ粒子は異物として認識され排除されてしまうのです。そのため腫瘍の防御システムをくぐり抜け、忍び込ませる必要があります。ナノ粒子を変装させることにより、この異物を取り除こうとするメカニズムを 通過させなくてはなりません。

一石二鳥の対策

そこで我々はナノ粒子の周りに もう一枚の負電荷を帯びた層を足すことにしました。2つの点で役に立ちます。1つ目は、この外層は体内にある水分を多く保持する多糖類で、もともと負電荷を帯びているものの一つであり。これが ナノ粒子の周りに水分子の膜を作り出し、覆い隠し見えなくする効果を与えるのです。つまり、体内に入っても異物と認識されないようにできるのです。この見えないコートは ナノ粒子が血流を通じ、身体から除去されることなく、腫瘍にたどり着くまで長く遠く旅することを可能にします。

2つ目は、この層は特異的に腫瘍細胞と結びつく分子を内包することができるのです。そのため一度結合されるとがん細胞はナノ粒子を取り込むので、がん細胞の中にナノ粒子が入るようになるのです。これで闘う準備が出来ました。
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