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肉の臭み消しや香りづけとして料理に使われたり、抗菌作用を持つことから薬として用いられるなど、昔から広い用途で知られるハーブ・ローズマリー。

そのローズマリー由来のテルペノイドである「カルノシン酸」(※)に、アルツハイマー病の抑制効果があることを発見したと、東京工科大学応用生物学部の佐藤巧己教授らの研究チームが12月12日、発表した。

米国シンテロン研究所のスチュワート・リプトン教授らとの国際共同研究で明らかにしたもので、研究論文は科学誌「Cell Death and Disease」2016年11月24日号に掲載されている。


※ テルペノイド:イソプレンを構成単位とする一群の天然物の総称。緑色植物や藻類、菌類などが産生する。「カルノシン酸」はローズマリーが産生するテルペノイドの1つ。

経口摂取でアルツハイマー原因物質が減少

全認知症患者のうち7割を占めるアルツハイマー病は、ベータアミロイドと呼ばれるタンパク質が脳内に異常蓄積することが原因で発症するとされており、記憶中枢である海馬や大脳皮質の神経細胞が変性するという特徴を持つ。

本研究ではアルツハイマー病モデルのマウスに、ローズマリー由来の「カルノシン酸」を経口投与。
すると下の画像のように、主に海馬を中心とする脳の神経細胞で、ベータアミロイドの沈着が有意に減少したという。
海馬でのベータアミロイドの沈着

海馬でのベータアミロイドの沈着

ところどころに見える青白色の点がベータアミロイドの沈着・凝集したもの。

画像左のコントロール(※)との比較で、画像右のカルノシン酸投与群ではベータアミロイドが有意に低下していることがわかる。


※コントロール:結果を検証するための対象実験。薬の場合①効果のない偽薬を与える群=コントロールと、②検証する薬剤を投与する群の2グループを作り、その結果から②の有用性を検証するのが一般的。

記憶機能の回復も確認

さらに研究チームは、アルツハイマー病の特徴である神経細胞の変性をカルノシン酸が抑制し、マウスの記憶機能を回復させることも確認。

これは、カルノシン酸が転写因子*6Nrf2*7(※)を活性化したことでベータアミロイドの沈着を防ぎ、神経変性を抑制したことを示しており、カルノシン酸によるアルツハイマー病の予防が期待される結果だと分析している。


※ 転写因子:DNAに特異的に結合する蛋白質一群。DNA上の転写を制御する領域に結合し、DNAの遺伝情報をRNA(リボ核酸)に転写する過程を促進もしくは逆に抑制する。
Nrf2は酸化ストレスに対抗する酵素群を一括して制御する転写因子で、カルノシン酸によって活性化される。
カルノシン酸の神経保護作用

カルノシン酸の神経保護作用

海馬の神経細胞を培養したもので、赤色が神経細胞、青色が核を示している。

ベータアミロイドを添加すると神経細胞が消失したが(画像左)、これにカルノシン酸を同時に添加すると神経細胞の消失が抑制された(画像右)。

世界初のベータアミロイド抑制効果を持つ薬剤に期待

今現在、臨床現場で使用されているアルツハイマー病の薬剤「ドネペジル」(商品名アリセプト)や「メマンチン」(商品名メマリー)は、症状の進行を抑えるためのものであり、病気の原因物質であるベータアミロイドの蓄積そのものを抑制する効果を持つ薬は、いまだ存在していない。

そんななか、本研究によりハーブ・ローズマリー由来のカルノシン酸にベータアミロイド抑制効果があることが明らかになり、アルツハイマー病の予防治療などに応用できる可能性が示されたと、研究チーム。

今後は製薬会社や食品会社と連携して医薬品や健康食品への応用、新たな治療法の開発などを目指すとしている。

引用・参照

http://www.teu.ac.jp/press/2016.html?id=276
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