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認知症の中で患者数が最も多いアルツハイマー病。
その新しい薬を創るための創薬ターゲットが見つかった。

11月4日、東北大学大学院薬学研究科の森口茂樹講師、福永浩司教授らの研究グループが発表した「メマンチンは脳インスリンシグナルを改善する」という研究成果の中で示されたもので、本研究はアルツハイマーが脳内インスリンシグナルの破綻(=脳の糖尿病)であるという仮説を、初めて実証している。


●メマンチンの新しい作用を発見●

メマンチンは2011年6月に、第一三共株式会社が発売した、中程度および高度アルツハイマー型認知症における症状の進行を抑制する最新の薬(商品名:メマリー)。

現在、アルツハイマーの治療薬として日本で承認されているのは全4種類(根治薬は存在しない)だが、ドネぺジル(商品名:アリセプト)に代表される3種類のアセチルコリンエステラーゼ阻害薬と違い、メマンチンはNMDA受容体阻害薬という作用機序を有している。

そのメマンチンが、脳内インスリンシグナルに関わるタンパク質である「ATP感受性カリウムチャネル(Kir6.1/Kir6.2チャネル)」を阻害するというのが、本研究で発見された新規作用だ。

Kir6.1チャネルは主に神経細胞体(神経細胞の核や細胞質がある部分)に、kir6.2チャネルはシナプス(神経細胞間の接合部。情報を伝える機能を担う)の後部に発現しているが、Kir6.2欠損マウスは認知機能障害を示し、アルツハイマー病モデルマウスではKir6.2のタンパク質発現が減少している。

このKir6.1/Kir6.2チャネルをメマンチンが阻害することにより、興奮性神経伝達を促進。シナプス後部でのCa2+/濃度を上昇させ、記憶分子Ca2+/カルモデュリン依存性プロテインキナーゼⅡ(CaMKⅡ)を活性化して、認知・記憶を改善することが明らかになった。
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●「アルツハイマーは脳の糖尿病」と実証●

前述したように、ATP感受性カリウムチャネルは脳内インスリンシグナルに関わるタンパク質であり、糖尿病治療薬であるスルホニル尿素系薬剤(グリベンクラミドなど)が作用するカリウムチャネルでもある。

実際にメマンチンは糖尿病モデルマウスの血糖値を低下させ、認知障害も改善することから、本研究はアルツハイマーが脳内インスリンシグナルの破綻(脳の糖尿病)であるという仮説(※1)を実証した初めての成果であり、脳のKir6.2チャネルが新しいアルツハイマー治療薬の創薬ターゲットであることが示された、と同研究グループは述べている。

本研究は文部科学省科学研究費助成事業及び日本医療研究開発機構AMEDの支援を受けて行われ、本成果は2016年10月25日(日本時間26日)にMolecular Psychiatry誌(電子版)に掲載された。



※1 アルツハイマー病の「脳糖尿病仮説」

亡くなったアルツハイマー病患者の脳を解剖して調べたところ、

① 健常な人の脳に比べて神経細胞におけるインスリンの信号が伝わりにくく、インスリンによく似た分子であるインスリン様成長因子の信号も伝わりにくいことがわかった
② インスリンが関係する遺伝子の働きに変化が認められ、インスリンを中心とする多くの分子の働きが低下していた

以上2つの研究成果などから、アルツハイマー病ではインスリン(血液中のブドウ糖を必要十分なだけ細胞に取り込む機能を持つホルモン)の働きが何らかの理由で障害されている=糖尿病と似た状態に脳内がなっているのではないかという仮説。

なお、糖尿病患者はそうでない人よりアルツハイマー病を発症しやすいことが、すでに科学的に証明されている。

引用・参照

http://www.tohoku.ac.jp/japanese/2016/11/press20161104-02.html
http://www.tohoku.ac.jp/japanese/newimg/pressimg/tohokuuniv-press20161104_02web.pdf
https://www.medicallibrary-dsc.info/di/faq/memary.php
http://www.asahi.com/articles/SDI201512074453.html
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