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塩野義製薬株式会社が、アメリカ食品医薬品局(FDA)に新薬承認申請していた FETROJA®(一般名:cefiderocol)について、2019年11月に、「他の治療選択肢が無いもしくは限られた18 歳以上の患者における、グラム陰性菌による腎盂炎を含む複雑尿路感染症治療」を適応として承認を取得したことを発表しました。

グラム陰性菌のカルバペネム系抗菌薬への耐性獲得には主に3 つの機序が関連しますが、FETROJAはそれらの影響を受けずに抗菌力を発揮する初のラクタム系抗菌薬です。

このたびの承認は、主検証試験である複雑尿路感染症を対象とした国際共同試験(APEKS-cUTI)と、副次試験であるカルバペネム耐性菌感染症を対象とした国際共同試験(CREDIBLE-CR)の結果をもとに判断されました。

APEKS-cUTI試験においてFETROJAは、主要評価項目である投与終了時から約7日後の臨床効果および細菌学的効果の複合有効率について、対照薬であるイミペネム/シラスタチン(IPM/CS)に対する非劣性を示すと共に、優越性も示しました。また、FETROJA群の有害事象の発生率は重篤なものも含めIPM/CS 群より低く、FETROJAに対する良好な忍容性が確認されました。

CREDIBLE-CR試験は非盲検で実施され、FETROJA群ではFETROJA単剤投与の割合が82.5%であったのに対し、既存薬による最善の治療群では 2 または 3 剤による併用療法が 81.9%であり、その多くにコリスチンを含んでいました。FETROJAは、主要評価項目である投与終了時から7日後の臨床効果および細菌学的効果について、既存薬による最善の治療法と同程度の効果を示しました。また、副次評価項目である投与開始28日後の全死因死亡率は、FETROJA群で24.8%(25/101 例)、既存薬による最善の治療群で18.4%(9/49 例)でした。

FETROJA群で死亡率が高くなった原因は特定されていませんが、患者の死因の多くは感染症の悪化、合併症の併発、基礎疾患によるものでした。なお、試験の責任医師、データ安全性モニタリング委員会、ならびに死因裁定委員会からは、FETROJAの投与と死亡の関連性はないと判断されています。

FETROJA®(cefiderocol)について

FETROJAは、多剤耐性菌を含むグラム陰性菌の外膜を効果的に通過して抗菌活性を発揮する新規のシデロフォアセファロスポリン抗菌薬です。FETROJAは細菌のカルバペネムへの耐性獲得に関連する3つの主な機序(ポーリンチャネルの変異による膜透過性低下、ラクタマーゼによる不活化、排出ポンプの過剰産生)による影響を受けずに抗菌力を発揮します。鉄と結合する独自の構造を有することにより、細菌が養分である鉄を取り込むために利用する鉄トランスポーターを介し、細菌内に能動的に運ばれます。

その結果、FETROJAは細菌のペリプラズム内に効率よく取り込まれ、細胞壁合成を効率的に阻害します。またFETROJAは、ESBLs、AmpC、セリン型及びメタロ型カルバペネマーゼなどの問題となっているβラクタマーゼを産生する細菌に対してもin vitro活性を示します。グローバルで実施した感受性サーベイランス試験*において、FETROJAはカルバペネム系抗菌薬に耐性を示す緑膿菌、アシネトバクター・バウマニ、ステノトロホモナス・マルトフィリアおよび腸内細菌科細菌を含むグラム陰性菌に対し、in vitro下で広い抗菌スペクトルを示しました。これに対して、FETROJAはグラム陽性菌および嫌気性菌に対してのin vitro活性は強くありません。

*サーベイランス試験:医療機関より入手した臨床分離菌の薬剤感受性を調査する試験

グラム陰性菌感染症について

カルバペネム系抗菌薬に耐性を示す緑膿菌、アシネトバクター・バウマニ、ステノトロホモナス・マルトフィリアおよび腸内細菌科細菌を含むグラム陰性菌への有効な治療法は、重大なアンメットメディカルニーズです。多剤耐性グラム陰性菌が増加していることから、治療が困難になっており、これらの感染による致死率も増加しています。

アメリカでは、年間少なくとも280万人が薬剤耐性菌に感染し、そのうち少なくとも3万5千人が死亡することが報告されています。また、ヨーロッパでは、年間約2 万 5 千人が多剤耐性菌への感染により死亡することが報告されています。

カルバペネム系抗菌薬に耐性を示す緑膿菌、アシネトバクター・バウマニおよび腸内細菌科細菌を含むグラム陰性菌に対する新たな抗菌薬の研究開発は、世界保健機関および米国疾病予防管理センターにより、最優先事項と考えられています。
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