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IBMは、Apple ResearchKitを利用する、NPOや、がん研究を進める教育機関向けに、コグニティブコンピューティング技術「IBM Watson」のストレージを無料で提供すると発表した。IBMとAppleは、昨年4月、ヘルスケア応用に向けた事業部門「IBM Watson Health」を立ち上げている。

今回のストレージ無償提供では、AppleのiOSアプリを通じてアップロードした情報を、HIPAA(医療保険の相互運用性と説明責任に関する法律)の規格に沿って患者情報の機密性、統合性、可用性が保護された形式で、最大で1TB、最長3年間保存することができる。ただし、このプロジェクトに参加するには、すでに該当研究/プロジェクトが治験審査委員会の審査を通っている必要がある。

アップロードされたデータは互換性がある形式で蓄積されるため、Watsonを通じたデータ傾向の抽出や、インサイトを導き出すなどの処理も可能だという。しかし、こうしたWatsonを利用した分析や解析には、追加で利用料を払う必要があり、IBMは分析にかかるコストを明かしておらず、個別に相談を受け付けるとしている。

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IBMは2014年1月にIBMのコグニティブコンピューティング技術であるWatsonの活用を目的とした「Watson Business Group」を立ち上げているが、その最初のプロジェクトには、アメリカのメモリアルスローンケタリングがんセンターと、健康保険会社のWellPointが含まれているなど、Watsonとヘルスケアの領域との結びつきはかねてより強かったという背景がある。

Appleは2014年7月にIBMと提携したが、この提携の狙いは当初より、ビジネスチャネルの獲得と、IBMの持つWatsonをはじめとするデータ解析の領域の強化だと考えれてた。

AppleのReserch Kitというプラットフォームにおいては、これまで情報のみが揃っている状況で、この情報を活用するプレーヤーの不在が大きな課題になっていた。今回のニュースは、IBM側のWatson活用と、Apple側のデータ活用という課題感がマッチし、一連の課題打破への起爆剤としての一手だと見て取れる。

Appleは2016年のQ2決算において、13年ぶりのマイナス成長となり、ジョブズ亡き後のクック体制の真価が問われるフェーズにあり、Reserch Kitとともに、iOS8で初めてデフォルトアプリとしてインプリメントされた「ヘルスケア」や、クック体制において、ジョブズの息がかかっていない初めての新製品として発表されたApple Watchなど、ヘルスケア領域はクック肝入りとされている。

かつてのイノベーティブな企業から、今や一般の大企業となりつつあるAppleが今後の活路として選んだ2Bの領域での柱として、ヘルスケア領域でのスケールは重要アジェンダである。
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