PULSE INTERVIEW 後篇

データが変える予防の未来

山本隆太郎
日本医療ベンチャー協会副理事
2017年9月12日

医療・ヘルスケアの未来予想図

山本さんは、日本医療ベンチャー協会を立ち上げられるとともに、ベンチャー企業として、東京大学と会社も立ち上げられました。現在、医療・ヘルスケアでは、様々な領域でテクノロジーが進歩し、ビジネスも広がっています。そうした中で、山本さんは、この医療・ヘルスケア業界について、どういった未来像をお持ちなのでしょうか?
私の中で、医療・ヘルスケア業界が今後どうなっていくのか、以下の図で、その俯瞰図を整理してみました。
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医療を大きく分けると、自己管理の部分と、他者管理の部分の2つに大きく分かれるのではないかと考えています。

要は、サプリメント飲みましょうとか、民間療法でなんとかしましょうというのは自己管理の領域で、そうではなく、人が介入したり、ウェアラブル端末でデータを取って解析したりすることというのは他者管理の領域で、この予防のサービスに分けています。そして、矢印にむかうほど高度に個別化していき、この方向がヘルスケア業界の成長の方向ではないかという風に考えています。

自己管理をしている人達が、病院で疾病啓発や情報提供を受けることで、啓発され行動変容を起こし、次のステップに移っていくだろうというのも1つの方向です。

この次のステップでは、健康に気をつけ始めた人が、今度はウェアラブル端末を付け始めたり、生体機器で自分のデータを取り始めたりといったサービスも利用し始めると思います。

こうした中で、ビッグデータ解析、AI化を昇華させた先に、そのデータを活用した予防マーケティング、つまりどういうものを食べると良いのか、健康な人は生命保険の値段が下がってくる、個別具体的な医療の提案、他にもフィンテックや、ロボットとの連携も見えてくる。こうした階層で、いま未来図を捉えています。

「予防ブーム」への違和感

また、現在では予防という領域が注目されています。
いま、医療費が増大し、そのことが問題として議論されている中で、予防に注目が集まっています。私も、予防と医療とを比較した時に、将来的には、予防の比率が今以上に大きくなると考えています。

しかし私は、医療費が膨らむから予防で削減していこうという医療費削減のみの議論には、違和感を感じています。
どういうことでしょうか?
私は、10年前に会社をやっていたときに、予防に注目し始めました。当時は「予防なんて必要ないよ、病気になれば病院にかかればいいじゃないか」という方ばかりだったんですが、そうではなく病気にかからず、理想はピンピンコロリの方が、人間本来の生き方なのではないかと思ったんです。

そこに近年、医療費の増大の問題がリンクし始め、ここ数年で一気に予防の領域が注目をされていきました。

私は、あくまでこの前段の人間のQOLに着目していて、医療費の削減のみの文脈は少し違うのではないかと考えています。当然、結果的に医療費削減につながるということにはなると思いますが。

産業のバランス的な話をすれば、これまでは医療が大きかったのですが、これからは本来の価値観に収束していき、必然的に医療がある程度の規模感で落ち着き、バランスを取る意味で予防が大きくなっていくのではないかと思っています。

この、予防と医療のバランスが変わっていく中で、予防においても医療に求められているようなエビデンスによる説得力が重要なのではないかと考えています。

では、エビデンスをどう作り、どう説得力を持たせていくのかについて考えたときに、今ようやくAI・ビッグデータがでてきた。これが予防の領域のエビデンスづくりに大きく役立つのではないかと考えています。

エビデンスをつくる情報

エビデンスをつくる情報というのは、どういった情報になるのでしょうか?
生体情報・ライフスタイルに関する情報が、予防の領域では重要な情報になってくると考えています。ここに私としても寄与したいという思いから、今回、東京大学と組んで会社を作りました。

私の直感としては、ビッグデータ解析して整理された情報を活用していく需要はかなり大きく、市場規模、社会的なインパクトの面では、それらを活用したサービスが拡大すると考えます。

一方で、その情報を活用したサービスについては、人間の多様性に合わせていく分野なので、どこが勝つかという話ではなく、色々なサービスが出てくることが考えられ、一プレイヤーだけで全ての領域をカバーするというのは非常に難しい領域です。

このように業界の将来像を俯瞰して捉え、どこの部分をカバレッジしてやっていくのかと考えた時に、一プレーヤーとしては、今後出てくるであろうサービスのベースになる、ビッグデータ解析やAI化ではないか考えました。そこで、業界の仲間にしたところ、東大の数理科学科の教授を紹介していただいき、一緒に組んでこの業界のビッグデータ解析、AI化の領域を担っていけないかと考えています。
この分野の現状については、どう捉えられていますか?
すでに良い技術はある程度出来上がっている一方で、データがまだまだ分散して存在しているのが現実です。

多くの人は 「データがあれば、AI化・ビッグデータ化できるんでしょ」というのですが、これは勘違いで、ビッグデータ解析の技術はあっても、データが分散されていいて、そもそも解析するのに、まとまったデータがないというのが今の状況です。 加えて、データを持っていてる企業も、データの質に意識が弱い。データがあれば何かが見つかるのではないかと思っている方が多いというのが現状です。

なので、私が企業にお話をする際には、データを取るところから一緒にやらせてくださいと言っています。つまり、すでに持っているデバイスから取られたデータありきでの話ではなく、データをどう活用できるのか、そういった議論から一緒にさせてくださいということです 。

今は、統合データベース化して、質の高いビッグデータを実現するために、各プレイヤーと一緒にデータを取るところから行っています。これはものすごく地道な話ではあると思います。

また、ここについて私たちはバーティカルに考えているところもあって、 データをどう使うのかという話からはじめて、データを収集、集積、活用のなかで業者と一緒に取り組んでいこうとも考えています。というのも、データの活用イメージを持った上でデータ収集をしないと、前述の使えないデータになってしまうので、データ取りから活用までの循環を企業の中で作っている最中でもあります。

そうした中で、今ヘルスケアの入り口である健康診断のデータも取り扱い始めていたり、生命保険とフィンテックの文脈で企業と話を進めていたりします。また先日はあるマーケティングの会社と話をしていると、彼らもこれから広告のあり方は生体情報やライフスタイルに関する情報を活用していきたいという話も出てきています。
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