⚫それではスタンフォードの池野さんの基調講演をお聞きください。

「innovationは、日本語では、技術革新と訳されてきました。1950年代に今の経済産業省(当時は通産省)が経済白書の中でinnovationという英語を”技術革新”という日本語に初めて翻訳して使用されたのがはじまりとされています。

この翻訳は、当時(日本経済の高度成長期)においては正しかったと思います。当時は、新しい技術があって、そこが起点となって新しい価値がこの世の中に次々に生まれる時代でした。

本来のinnovationの意味は”価値を生み出し社会に大きな影響を与えること”になります。必ずしも革新的な技術が必要であるとはいえない。一番大事なことは価値を見つけること。世の中に必要な事を見極めその価値を持って世の中に影響を与える事を成し遂げるというのが本来の意味です。

どんな新しい価値を見つけ出すか? こちらが大事なんですね。

innovationは「何かを発明する」し、それを「商業化」するという事で価値を多くの人々と共有し社会に大きな影響を与える事です。製薬などの分野では「何かを発明する」という事よりも「何かを発見する」というリサーチに重きが置かれますね。どちらも同じ価値創造の手段です。

医療機器の場合は「何かを発明する」ということになります。
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⚫どうしたら発明は生まれるのか?

ここにはオーソドックスな二つのやり方が存在します。

一つ目は最初に新しいテクノロジーがあってそれを医療の現場や患者さんのニーズに当てはめていく方法です。

もう一つは最初に臨床や現場で困っているという切実なニーズがあってそこからアイデア出しをして新しいものを開発するというやり方です。

前者をテクノロジープッシュの開発。後者をニーズからアイデア出しプッシュの開発。といってもいいでしょう。

日本の高度成長期は、技術革新(欧米の技術革新をキャッチアップすること)が持続的な高付加価値を生み続ける時代でした。

その時代が終わり今は必ずしも高性能から高付加価値を生まない。

新しい価値を見つけ出し創造する。前者の持続的イノベーションに対しては破壊的(今までの常識を覆す。違うものを生み出す)イノベーション(1995年ハーバード大学のクレイトン・クリステンセン教授考案)と呼ばれる開発の時代になってきました。

技術もニーズもアイデアも大事ですがその奥にこの新しい価値を社会に生み出すことが大事な時代です。
⚫もう少し発明の源を考えてみましょう

「発明の源は何か?」医療機器の場合は医療の現場や臨床でのニーズです。まず。そのニーズに対して必ずしも答えは一つではないので一つのリーズンに対して答えを複数用意していく。そこから現実的で価値のあるアイデアを絞り込んでいく。

アイデア✖️ニーズ=ソリューションの種。この種を育てる=リサーチ&デベロップメント。ニーズを起点とした医療機器開発の基本的な捉え方になります。

じゃあどうやってニーズを見つけていくのか? 手法は次の3つです。
一番目、現場の医者や看護師に聞く。
二番目、自分で調査して見つける。
三番目は誰かさんが発明したもの真っ先に使ってビジネス化する。(これをクイックフォロワーという)

第一番目人に聞く。これとても重要なんですが、よく考えて作らないとお医者さんが「こういうのがなくて困っているんです。作ってください」と言われて作ってみたが、ニーズがそのお医者さんだけだったということが起こってしまう。

ヘンリー・フォードが自動車を作った話。顧客に何が欲しいかと尋ねたら「はやく走る馬が欲しい」と言われた。

ここで客の言葉を鵜呑みにしてはやく走る馬を作っていたらどうだろう。自動車は作らなかった。ヘンリー・フォードの賢いところはなぜ客がはやい馬が欲しいのかを立ち止まって考えてみたところだ。

彼は客はA地点からΒ地点にはやく安全にコストも安く移動する方法があればいいことに気がつき自動で動く馬車を発明した。

ゼロワン。課題発見型のスタートアップ。ヘンリー・フォードの話は示唆に富みます。
アインシュタインは世界を揺るがすような問題が起きた時に1時間という猶予を与えられたらその問題は一体何かを55分熟慮して最後の5分に解決策を考えると言っています。

本田宗一郎はとにかく客を観察してこいと部下に激しい口調で命令した。
トヨタと「差」をつけるんではないんだトヨタと「違う」ことをやんなきゃダメだ。
とにかく現場に行って目の当たりに見てよく考えろということです。

「バイオデザイン」池野文昭 後編 - PULSE

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