ロバート・グプタ:音楽と医学の間で | TED Talk | TED.com

ガブリエル・ギフォーズ氏

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アリゾナ州のガブリエル・ギフォーズ下院議員が銃で頭を打たれた後の、回復に向けてのリハビリを始めたという動画を見ました。銃弾は左脳に撃ち込まれ脳内の言語を司る中枢であるブローカ野を破壊しました。

この時ギフォーズ氏は言語療法士の治療を受け簡単な単語を発することさえ難しくなっていました。彼女は打ちのめされ啜り泣きはじめ言葉もありませんでした。少しすると、言語療法士は別の方法を試そうと歌を歌いはじめました。ギフォーズさんも涙にぬれた顔で歌いはじめました。

ところが歌の中では、彼女の想いを言葉にして発することができたのです。ギフォーズさんはこう歌いました。「輝かせよう 輝かせよう」と。これが力強く示すように、音楽が持つ美は言葉にできないことが可能です。

音楽療法

シュラーグ博士

シュラーグ博士

ギフォーズ議員の動画を見て、ゴットフリード・シュラーグ博士のことを思い出しました。彼はハーバード大学で音楽と脳の研究をしている神経科学者で「メロディック・イントネーション・セラピー」という言葉で使われている音楽療法の主唱者でもあります。シュラーグ博士が気づいたのは脳梗塞を起こして失語症になり3、4語の文章ですら、発することができない患者でも楽曲の歌詞なら言葉にできるということです。

歌の集中レッスンを受けると音楽が患者の脳神経をつなぎ直し代替的な言語中枢を右脳に作り出し損傷を受けた左脳を保管することを博士は発見したのです。

シュラーグ博士との出会い

17歳の時、私はシュラーグ博士の研究室を訪ねました。博士は音楽と脳についての研究の最先端を見させてくれました。

音楽家の脳の構造が他の人とは根本的に違っていること、音楽を演奏したり聴いたりすることが前頭葉前部皮質から小脳にいたるまで脳全体を照らすように刺激を与えること、音楽が自閉症の子供や鬱っぽい人たちを救うための神経精神病学における治療法になっていること、音楽がパーキンソン病患者の震えが収まり、足取りがしっかり捨こと、そして重度の認知症患者がピアノの前に座ると小さい頃に学んだショパンの曲を演奏することができるといった話です。

音楽と医学の狭間で

でもその日の私の訪問には、胸に秘めた目的がありました。音楽と医学のどちらを選ぶべきか迷っていたからです。私はちょうど学部の過程を終え、ハーバード大学のデニス・セルコー博士の研究室で助手として働きながら、パーキンソン病の研究をしていました。

神経科学に心惹かれ外科医になりたいと思っていました。ポール・ファーマーやリック・ホーズのような勇敢な医師になってハイチやエチオピアのような場所に赴き、エイズ患者や多剤耐性の結核、ガンに冒された子供の治療に当たりたかったのです。赤十字や国境なき医師団で働くような医師です。

あって当たり前の音楽

その一方で私は幼い頃からずっとバイオリンを弾いてきました。音楽は私にとってただの情熱ではなく、なくてはならないものでした。

私はジュリアード音楽院に学び、テルアビブでのデビュー公演は、ズービン・メータ指揮のイスラエル・フィルと共演することができました。

シュラーグ博士を訪問して知ったのですが、博士はオルガン奏者としてウィーン音楽院で学び、その後医学の道を究めるために、音楽をあきらめた人でした。

博士に聞く

その日、私はこう聞かずには入られませんでした。「その決断をするのにどれほど悩みましたか?」。

博士はこう言いました。「当時に戻ってオルガンを弾きたくなることもあるよ。君にとって、医大は後からでも行くことができるが、バイオリンはそうはいかないよ」。
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