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がんという病気の恐ろしさのひとつは、最初に発生した場所から別の臓器や器官に移動し、“転移”することだろう。転移したがんは根治が困難でもあり、がんを転移させないことが、がん治療の大きな課題といっていい。
しかし、どの分子が、どのような仕組みで、がん細胞に高い移動能力を与えているのかは、まだキチンと解明されていない。

そんななか、がん細胞の転移の仕組みの一部を明らかにし、転移を防ぐ新たな治療法を開発する一端となる研究成果が発表された。

乳がんの転移を促進する転写因子「SALL4」

11月8日にリリースが出された、京都大学の伊東潤二 医学研究科特定助教、戸井雅和 同教授、飯田敦夫 再生医科学研究所助教、瀬原淳子 同教授らの研究グループによる「乳がん細胞の転移を促進する新たなメカニズムの解明」が、それ。

研究チームは実験を通し、転写因子の「SALL4」が、細胞と細胞外基質の接着に関わる遺伝子「integrin α6」と「integrin β1」の発現を増大させることで、転移性乳がんの細胞が高い移動能力を得ていることを発見。
この「SALL4-integrin α6β1系」が生体内での転移を促進することを、小型魚類ゼブラフィッシュの稚魚への乳がん細胞移植実験で明らかにしたという。

【転写因子】遺伝子の発現を調節し、細胞の性質を変化させる分子
【細胞外基質】生体を構成する体細胞の外側にある線維状や網目状の構造体。動物の場合、コラーゲン・ヒアルロン酸・プロテオグリカンなどが主な成分。
転移性乳がん細胞で、SALL4 によって移動能力が向上...

転移性乳がん細胞で、SALL4 によって移動能力が向上するメカニズム

大腸がんなど他のがん種でも高発現する「SALL4」

転写因子「SALL4」の高発現は大腸がんでも転移率と相関関係があることが分かっており、また、他のがんでも高発現が見られることが報告されている。

従って、本研究で判明した「SALL4-integrin α6β1系」は、さまざまながんで転移の促進に関わっている可能性があると、研究チーム。

今後、SALL4 の発現を高めているメカニズムが解明されれば、がんが転移能力を高める仕組みがより詳しく分かり、新たながん治療法の確立が期待できるとしている。

乳がんの転移を調べる診断マーカーにも

と同時に、乳がんの転移促進を促すと確認された転写因子の「SALL4」や遺伝子「integrin α6」「integrin β1」を、転移性乳がんの診断マーカーとして利用できるとも考えていると、研究チームは今回の発表の中で述べている。

なお、本研究成果は2016年10月20日、「Biochimica et Biophysica Acta-Molecular Cell Research」に掲載された。

引用・参照

http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/research/research_results/2016/161020_2.html
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/research/research_results/2016/documents/161020_2/01.pdf
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