人工知能のワトソンが、がんの治療にまた一役買うことになりそうだ。クエスト・ダイアグノスティクス社は、IBM社のWatson Health事業部と協力し遺伝性腫瘍の治療に*コグニティブ・コンピューティング技術を役立てるサービスを10月に始動させた。クエスト・ダイアグノスティクス社は、米国ニュージャージー州に拠点をおく、医学研究を中心としたサービスを提供する企業である。
サービス名は“IBM Watson Genomics from Quest Diagnostics”。

ダイアグノスティクス社ではすでに、国内の約半数の医師と病院向けにサービスを提供している。本プロジェクトでさらにサービスを拡大し米国におけるがん治療の約70%を行う米国の地域のがん専門医、医師などにサービスを提供する。
IBM社、クエスト社以外にもプロジェクトにデータや技術提供をしている組織は複数ある。がん治療において高く評価されているメモリアル・スローン・ケタリングがんセンター (MSK)は独自のデータベースOncoKBを提供する。さらに、ハーバード大学と米国マサチューセッツ工科大学が共同で運営する研究施設(Broad Institute of Harvard and MIT)はゲノム解析機能を提供する。
*コグニティブ・コンピューティング技術:「コンピュータが自ら学習し、考え、瞬時に膨大な様々な情報源から大量のデータを統合しし分析することができるシステム」

具体的なサービス内容

本サービスでは、充実性腫瘍(固形成分でできた腫瘍)の腫瘍生検標本を担当医がクエスト・ダイアグノスティクス社に送ることができる。次に、病理医が用意したサンプルがゲノム解析される。その後IBM社のワトソンがそのデータと臨床データ、科学的、薬理学なデータから、最適な治療法を割り出す。最後に、クエストの病理医が結果を再審査してから特定の患者への推奨治療法のレポートが送付される。

遺伝性腫瘍治療の難しさと可能性

医師が遺伝性腫瘍のデータを習慣的に患者の治療においての判断に反映するのは難しい。データ自体の複雑さはもちろん、特定の遺伝性腫瘍に適している治療法が少ないからだ。
遺伝性腫瘍のゲノム解析を幅広くアクセス可能にすることによって、遺伝性腫瘍の治療に役立てようとしている。
クエスト・ダイアグノスティクス社は臨床の現場で役立つ実験・研究を進めるとともに、医師に対して診療に役立つテクノロジーを提供する。また、社内の従業員に対して、糖尿病、心疾患等の病気を発見するための健康診断を行うプログラムを提供し人々が健康管理できるようにしている。
「ゲノム解析の使用や腫瘍の分析は個別化医療(プレシジョン・メディスン)、治療に必要なものだが、なかなか利用が難しい」とクエスト社の研究開発、医療部門のCMOで、SVP(シニア・バイス・プレジデント)のJay Wolgemuth氏は言う。
さらに「(Quest、IBM、MSKの)強力なコンビネーションが従来のゲノムサービスを追い抜く、対象となるがんの治療に対するより良いアプローチになると信じている」と語った。

引用・参考文献

「Quest, IBM bring artificial intelligence to genomic tumor data」
http://www.fiercebiotech.com/medical-devices/quest-ibm-bring-artificial-intelligence-to-genomic-tumor-data
「Quest Diagnostics – What We Do」
http://www.questdiagnostics.com/home/about/careers/know-us/what-we-do.html


「次世代ITのキーワード「コグニティブ・コンピューティング」〜IBMがリードする新たなコンピュータの時代とは?〜」http://www.jmca.jp/column/tu/tu29.html
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