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薬を飲むだけで、服薬の記録を蓄積してくれる錠剤――。そんな”スマート”な薬剤が登場しようとしている。

今やPCやスマホだけではなく、様々なものが情報を扱うデバイスと化している。住人の活動を感知し室温を調節するエアコンや、稼働率をデータとして蓄積して分析できる機械など、これまで人が手を動かして集めていたデータを自分で収集してくれる、スマートなマシンが登場している

その”スマート”の波はいま、私たちが日々服用する薬にまで及んでいる。わずか1cmにも満たない錠剤に搭載された極小センサーが、薬が服用されるとシグナルを発し、そのシグナルを患者の体に貼り付けたパッチがデータをスマートフォンやタブレットにBluetoothで送信されるのである。

このような、薬自身が服薬のデータを収集する「デジタルメディスン」を開発したのは大塚製薬と米Proteus Digital Health社である。2社は昨年、大塚製薬が製造・販売する抗精神病薬エビリファイに、Proteus社の開発した極小センサーとパッチ型シグナル検出器を組み合わせたこの商品の新薬承認申請をFDAに対して行っていた。その申請に対するFDAからの審査完了報告通知を両社は2016年4月27日に受け取った。大塚製薬によると、今回は承認は下りなかったが、「実際に使われる条件下での追加データなどを求められた」とのことであり、今後、FDAの要求に応えるべく協議していくという。

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大塚製薬は2012年7月にProteus社とライセンス契約を結んでいる。既に海外の有力企業から出資を受けていたProteus社と大塚製薬が独占的に提携をしたことは、日本の製薬企業が「IT×薬」という新たな分野に本気で参入する動きとして注目を集めた。

このデジタルメディスンに期待されているのは、飲み忘れを防止し、アドヒアランス(医師の指示通り服用すること)を向上させることである。エビリファイが処方される統合失調症などの精神疾患は医師の指示通り服薬している患者が3分の1ほどであると言われており、アドヒアランスを向上し、治療の効果を上げることが課題となっている。精神疾患に限らず、糖尿病や高血圧など、慢性疾患は治療が長期に及ぶためアドヒアランスが低下しやすく、デジタルメディスンの活躍する領域は広いだろう。

また、国レベルでは残薬(服用せずに自宅に残っている薬)を減らすことが増加の一途をたどる医療費に歯止めをかけるために重要と考えられており、何錠服用し、何錠残っているのかを手軽に、そして正確に医師や薬剤師が把握できるデジタルメディスンには残薬問題を解決することも期待されているだろう。
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