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あなたがもらった抗生物質、本当に必要ですか?

病気にかかって病院へ行くと処方されることが非常に多い抗生物質であるが、ここ数年、抗生物質の「無駄な処方」が医療関係者のみならず国・世界レベルで問題になっている。

風邪など本来抗生物質の投与が必要ない場面でも、医師が安易に抗生物質を投与することが医療現場で行われており、抗生物質に耐性を持つ細菌の出現を招いているのである。細菌の増殖速度はすさまじく、出現した耐性菌はすぐに拡散するため、抗生物質を適切な場面でのみ使用し、耐性菌出現のリスクを下げることの必要性が叫ばれている。

そのような中、今回アメリカで「あらゆる抗生物質が効かない細菌」が出現したというニュースが飛び込んできた。まさに悪夢のような細菌である。ペンシルバニア州の女性がかかった尿路感染症は、ほかの抗生物質が効かない細菌に投与される、いわば最後の砦である抗生物質コリスチンを投与してもなお、治癒しなかったという。この最強の耐性菌がどの程度世界に存在するのかなどはまだわかっていないが、病院などで広まれば大問題となることは明らかである。

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フレミングがペニシリンをアオカビから発見し…という話はあまりにも有名であるが、抗生物質の発見は人類の歴史を変えたというにふさわしいものである。かつては胃腸炎や肺炎など細菌による感染症は恐ろしい病気であったが、抗生物質はそれらの病気を近所の医院で簡単に治療できるものとしてしまった。

この発見により人類は細菌との戦いに勝利したかと思われた――。しかし、今でも科学者は細菌との戦いに頭を悩ませているという現実がある。細菌は抗生物質の中でも生き延びるために遺伝子を変化させ、抗生物質に耐性を獲得しているのである。人類も負けずと新しい抗生物質を開発するが、それに対しても細菌は耐性を獲得し、まさに「人間と細菌のいたちごっこ」が世界で繰り広げられている状況だ。

耐性菌の出現を防ぐための抗生物質の適正使用は、WHOや厚生労働省も対策に乗り出しており、厚生労働省は2020年までに抗生物質の使用量を3分の2に減らす目標を掲げて いる。副作用も少なく、価格も安いため、予防的に安易に処方する医師もいるが、抗生物質は人類の財産であることを認識し、必要な場面で適切に使用することを心掛けなければ、細菌と人類の戦いで細菌に屈することも十分あり得るのである。
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