2018年ノーベル医学生理学賞-本庶 佑、ジェームズ・アリソン氏が受賞 | PULSE

2018年ノーベル医学生理学賞-本庶 佑、ジェームズ・アリソン氏が受賞 |  PULSE
2018年のノーベル医学生理学賞を国立大学法人京都大学特別教授で公立大学法人静岡県立大学顧問の本庶 佑氏が受賞しました。 アメリカ・テキサス大学のジェームズ・アリソン教授との共同受賞で、賞は両氏の「オプジーボ」の研究が認められたことで、送られました。
がんの免疫チェックポイント阻害薬オプジーボ(抗PD-1抗体)。

この研究で、京都大学特別教授で静岡県立大学顧問の本庶佑氏がアメリカ・テキサス大学のジェームズ・アリソン氏と、ノーベル医学生理学賞を受賞した。そのオプジーボが、どんなものなのかを詳しく見ていく。

・オプジーボが効くのは患者全体の約3割・

止め時がわからないーーオプジーボ投与の難点として、よく耳にするのがこの言葉だ。
効く患者と効かない患者が存在するのはわかっているものの、その仕組みが解明されていないうえ、効果が出始める時期にはバラつきがあるため「この患者には効かない」と判断を下す材料がないのだ。それゆえ医師が「もう少し続ければ効果が出るかもしれない」と投薬続行に傾きがちなのだという。

が、実際には効果が得られるのは患者全体の3割程度。残り7割には効かないのが現実だ。

そんな背景を受け、オプジーボが効く仕組み/効かない仕組みを解明しようと、京都大学医学研究科で研究が行われた。

・カギとなるのは免疫細胞であるリンパ球・

結論から言うとーー

オプジーボは、末梢血中にわずか数パーセントしか存在しない「9型ヘルパーT細胞(Th9細胞)というリンパ球の一種に作用して、悪性黒色腫(メラノーマ:皮膚がんの一種)の患者に効果を発揮する=効くという新たなメカニズムが判明した

というのが、今回の発表だ。

もともと研究チームは「患者それぞれが持つ免疫状態の違いがオプジーボの効果の違いと関連しているのではないか?」との仮説からスタート。治療効果があった患者群となかった患者群におけるさまざまな免疫細胞と分子1つ、1つについて差がないかを分析したところ、治療効果のあった患者ではオプジーボ投与後に「9型ヘルパーT細胞(Th9細胞)」が3~4倍増加していることを発見する。

これを受け、「9型ヘルパーT細胞(Th9細胞)」を試験管内で作製。オプジーボ(抗PD-1抗体)を加えると、抗PD-1抗体がない場合に比べて、より効率よく「Th9細胞」を作り出せることも確認した。

また、「Th9細胞」が作り出すインターロイキン9という分子について、マウスモデルで実験を実施。インターロイキン9の作用を無効にする試薬を投与した悪性黒色腫のマウスは、しなかったマウスに比べて悪性黒色腫が早く進行するという実験結果から、「Th9細胞」由来のインターロイキン9には悪性黒色腫の進行を抑える作用があることを確認。

さらに、悪性黒色腫のがん細胞とリンパ球を試験管内で共培養し、がん細胞を破壊する効率を測定する実験により、インターロイキン9がある場合にリンパ球がより高い働きをすることも判明している。
図:オプジーボ®反応患者におけるTh9細胞の増加

図:オプジーボ®反応患者におけるTh9細胞の増加

オプジーボ®で効果のあった患者の末梢血を解析したところTh9細胞の増加が末梢神経で見られた。Th9細胞が産生するIL-9はCD8陽性T細胞に作用し、抗腫瘍効果を増強する。

・治療効果を早期判定するバイオマーカーに・

この発見により期待できる波及効果に、研究チームの大塚篤司医学研究科助教授が挙げたのは以下の2点だ。

① 末梢血中の「Th9細胞」を、オプジーボ投与後の早い段階で治療効果を判定するバイオマーカーとして活用する

② 「Th9細胞」の機能を高めることで、がんの進行を抑え、より効率的にがん細胞を破壊できるようになる可能性がある

・他にもオプジーボをめぐる動きが…・

一方で、オプジーボの製造販売元である小野薬品工業と国立がん研究センターが、2016年9月に包括的研究提携契約を終結。がん免疫療法の治療効果や副作用の予測に関連するバイオマーカーの発見を、課題の1つに挙げている。

また、5月には同じく京大の医科学研究科・小川誠司教授(分子腫瘍学)らの研究チームが、「PD-L1」遺伝子に欠損など異常がある場合にオプジーボを使うと、がん細胞が縮小することを確認したと発表。オプジーボがどの患者に効くかを見分ける手段になるのではないかと、現在進行中の治験に期待が寄せられている。

さらにアメリカでは、F.ホフマン・ラ・ロシェ社のPD-L1抗体テセントリク(アテゾリズマブ)が、転移性非小細胞肺がん(EGFR遺伝子変異、ALK遺伝子変異対象外)の適応として、FDA(アメリカ食品医薬局)から10月19日に承認を受けたと発表。オプジーボ、キイトルーダに続く免疫チェックポイント阻害薬の承認獲得を果たしている。
<引用・参照>
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/research/research_results/2016/documents/161024_1/01.pdf
http://www.kyoto-np.co.jp/environment/article/20161024000020

国立がん研究センターと小野薬品工業、包括的研究提携契約を締結(リリース)
http://www.ncc.go.jp/jp/information/press_release_20160916.html
「がん細胞が免疫から逃れるメカニズムの解明」(リリース)
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/research/research_results/2016/160524_1.html
アテゾリズマブ FDA承認獲得(リリース・英語)
http://www.roche.com/dam/jcr:cd294207-b4df-42fd-822c-f10ae968735c/en/med-cor-2016-10-19-e.pdf
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