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糖尿病網膜症(*1)や網膜剥離(*2)、網膜血管閉塞症(*3)といった、眼の病気で実施される硝子体(しょうしたい)手術。
眼の構造と硝子体の役割

眼の構造と硝子体の役割

網膜の内側にある白い部分が硝子体。透明のゼリー状の組織で、眼球の形を保つ役割を担っている。硝子体が炎症や出血によって濁ったり、網膜を牽引することで疾患の病状が悪化したり、網膜への光の到達を邪魔する(=網膜が視神経を通して電気信号を脳に送れなくなる=ものが見えなくなる)といったことが起こる。
硝子体手術では黒目の横の白目の部分に小さな穴を開け、そこから細い器具を挿入して医師が操作するのだが、その際に使われる眼科用映像システムに、世界で初めて『HDR』(説明は次章)ビデオカメラを搭載したものが登場。2017年1月23日、日本アルコン株式会社(*4)が国内販売を開始した。

iPhoneなどスマホ搭載の『HDR』とは別物なので、念のため

『HDR』とはHigh Dynamic Rangeの略で、明度(明るさ)の差のレンジ=幅を拡大する技術。

高画質規格として「4K(フルハイビジョンの4倍の解像度)の次はコレ」などと話題になっており、最新の4K テレビには『HDR』対応のものも増えている(4Kは“画素数”、HDRは“明るさ”を扱うものなので同時搭載が可能)。また、映画やブルーレイディスクなど『HDR』映像のコンテンツが出現していたり、映像配信大手のNetflixやAmazonが海外で配信を行っていたりするので、「あれか!」と納得する読者も多いかもしれない。

簡単に説明しておくと、明るい部分が白く飛んでしまったり、暗い部分が黒くなって見えにくいなど、これまでの映像ではうまく再現できなかった部分を表現する技術が『HDR』。
HDRなしで撮影した画像と、ありで撮影した画像

HDRなしで撮影した画像と、ありで撮影した画像

景色を撮影した際、左の2枚のように肉眼で見たものとは違う画像になってしまった…という経験は、誰しもあるはず。しかし、HDRを使って明度差を拡大することにより、幅広い明るさを処理できるようになり、肉眼で見たのと同じような映像が再現できるようになる。
ちなみにiPhoneなどスマートフォンのカメラにもHDRという機能が搭載されているが、こちらは「明るい画像」「正常な画像」「暗い画像」と明るさの違う画像を3枚撮影し、それらを合成することにより明るい部分から暗い部分までカバーした画像を作成するもの。技術的には全く別物だ。

偏光メガネ装着で3次元映像を可視化

前置きが長くなったが、その『HDR』ビデオカメラを搭載した、世界初の眼科用リアルタイム映像システム「NGENUITY® 3D ビジュアルシステム(エンジェニュイティ スリーディ ビジュアルシステム)」が、下の写真。
NGENUITY® 3D ビジュアルシステム

NGENUITY® 3D ビジュアルシステム

3D ビデオHDRカメラで撮影した映像をハイスピードで最適化し、デジタル高解像度 3D 4Kモニターと、専用の偏光メガネによって、「繊細な眼底組織をこれまでになく鮮明で奥行きのある表現可能」だと、アルコン社は説明する。

医師にはスムーズな手術環境・患者には負担軽減を提供

さらにNGENUITYではデジタルフィルター機能によるカラーコントラスト調整により、染色された増殖膜を強調して表示させるなど、手術ごとに映像をカスタマイズすることが可能となっている。
デジタルフィルター機能を使用してカラーコントラスト調整...

デジタルフィルター機能を使用してカラーコントラスト調整をした画像(右)と、未調整の画像(左)。

従来、硝子体手術に使われてきた光学顕微鏡では、角膜・水晶体・硝子体の混濁によって医師の視界が遮られたり、眼球内の照明用に使用される光ファイバーの眩しさや影などによって起こる、網膜周辺部の見えにくさが課題とされてきたのだが、このデジタルフィルター機能はそれらに対応するもの。

また、NGENUITYは光学顕微鏡と比べ、低光量ながら高度な映像処理が可能と、医師により良い手術環境を提供。とともに、術中の患者の眩しさや光暴露による悪影響を軽減することが期待できるそう。
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