PULSE INTERVIEW 第1章

医療イノベーションの時代はゲノムからはじまった

鈴木寛
東京大学教授
2017年3月7日
医療イノベーションが叫ばれる中、医療の現場では実際にどこまで進んでいるのか、またそれによりどういった変化が今後起こるのか。医療イノベーションの「今」を、文部科学省大臣補佐官であり、東京大学、慶應義塾大学の教授も務める鈴木寛氏に聞いた。

2003年にヒトゲノムの解析が終わりました

2003年にヒトゲノム解読が終わりました。その記念すべき2003年の文部大臣のステートメントが以下になります。

「DNAの二重らせん構造発見から50年、その記念すべき本年、人類の長年にわたる願いであったヒトゲノムの精密な解読が、国際的な科学協力の成果として完了した のは大変すばらしいことです。これは生命科学分野における夢の実現への一里塚です。
この解読にかかわった六カ国の多数の研究者が互いに協力し、不屈のご努力でこの偉業を成し遂げられたことを讃え、心から敬意を表します。特に日本の研究者が、壮大なプロジェクトであるこの国際ヒトゲノム計画に当初から積極的に参加し、大きな 貢献をしたことを大変誇りに思います。

解読されたヒトゲノムの情報は、ヒトの進化や生命の仕組みを解明するための有力な手段であり、これまで治療法が未解明であった病気の治療や予防のための技術開発などの飛躍的な進展の基礎となるものです。今後はこれらの成果をもとに、全生命システムの解明に向けた取組みや、ゲノム情報を戦略的に活用した研究開発が一層進展することを確信いたします。

我が国が将来、豊かで活力のある長寿社会を築くことができるよう、また人類の福祉と経済社会の発展に更に大きく貢献できるよう、文部科学省としてもこの分野の研究内容の発展に最大限の努力を行ってまいります。

平成15年4月14日
文部科学大臣
遠山 敦子

ゲノム解析の年表は次のようになります。かくて歴史の扉は開かれたと言う年が2003年だったわけです。

1986  ヒトゲノム計画の提言
1989  ヒトゲノム国際機構(HUGO)の設立
1991  国際ヒトゲノム計画開始
1996  バーミューダ会議
      ヒトゲノム配列決定コンソーシウム結成
2000  ヒトゲノム概要配列決定
2001  同上論文発表(Nature 2001//02/14号
2003  ヒトゲノム精密配列決定

新しい医療の時代がはじまるベルがかくて鳴らされたわけです。

1000ドルゲノムという時代がやってきました

私は常々「コンピューターテクノロジーのすごいところは、ほぼゼロ円で無限に複製ができることだ」と言ってきました。世の中はコストもかからないけど儲かりもしない時代に突入します。バブル時代のものを買うことが、お金を使うことが、幸せだという時代は終わりを迎えているのです。それを私は近代主義の終焉「卒近代」の時代と学生に話て来ました。

半導体の世界にムーアの法則というのがありますね。限りなくコストが下がる=限りなくコンピューターの性能がアップする。第4次産業革命という名のテクノロジーの進化がついに医療・健康の世界にやってきたのです。

そのことを伝えるメディアが私の研究室から生まれました。それがPulseです。

そしてゲノムもムーアの法則と同じようにゲノムの解析にかかるコストがものすごい速度でコストダウンしました。

写真はイルミナ製の「ハイセックX10シリーズ」(Hisec X Ten)という機械です。ハイセックXというのが10個あるというただそれだけなんですけれど、次世代シーケンサーという物凄い早いスピードで皆様のゲノム情報を読むことができる機械です。頑張って10台買いますと、1000$ゲノム、人間1人のゲノム配列全部を10万円で読むことができるというのが最近達成されてしまったのです。「1000ドルでゲノム解析でるなんて無理だよねって」過去10年ぐらい専門家もみんなで言っていたんですけれど、思っていたより早く実現してしまったということです。

次世代シークエンサーの革命が始まって、指数関数的にシークエンスのPerformanceが劇的にいま上がっているというこういうステージに入ってきたということですね。普通の人が、これまでは、ゲノム解読のデモクラタイゼーションが起こってるんですね。さらに、個別化医療と再生医療ということですけど、この大革命がこれから20年30年始まるっていうそういうステージに居ますと。ゲノム解読、シークエンスの領域はステージに入りましたと。

第4次産業革命はコストの劇的降下による市民革命という側面があります。テクノロジー×市民化この時代が今始まったということなのかと思います。

次回

再生医療と遠隔医療そして人工知能がどんどん進んで行く|鈴木寛 東京大学教授| 第2章 PULSE

再生医療と遠隔医療そして人工知能がどんどん進んで行く|鈴木寛 東京大学教授| 第2章    PULSE
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鈴木寛

東京大学教授 慶應義塾大学教授 文部科学大臣補佐官
1964年生まれ。杉並区立桃井第三小などを経て灘中・高、東大法卒。中高ではサッカーとバンドに明け暮れ、大学では演劇と音楽に没頭。通産官僚を経て、慶応義塾大学助教授。2001年参議院議員初当選(東京都)。以来、文部科学、医療を中心に活動。2007年再選。文部科学副大臣を2年間つとめる。2011年より、与党で政策調査会副会長、現在広報委員長。超党派スポーツ振興議連幹事長、東京オリンピック・パラリンピック招致議連事務局長。日本ユネスコ委員。大阪大学招聘教授、中央大学客員教授、電通大学客員教授。趣味:サッカー、合唱(六本木男声合唱団創立メンバー)、演劇。