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国立大学法人信州大学とブライトパス・バイオ株式会社が、固形がんを対象とした CAR-T細胞療法の臨床開発を目的として、共同研究開発契約を締結したことを発表しました。

HER2とよばれるがん抗原は多くの固形がんで過剰発現しており、すでに同標的に対する抗体医薬などが実用化され、がん治療における有力な標的抗原として注目されています。信州大学ではブライトパス・バイオと協業し、信州大学小児医学教室の中沢洋三教授及び京都府立医科大学小児科の柳生茂希助教らが製法を確立したHER2抗原を認識するHER2-CAR-T細胞を治験薬として、骨肉腫患者を対象とする医師主導治験の実施準備に入ります。

がん免疫療法の一つであるCAR-T細胞療法は、免疫細胞である T 細胞にがん抗原を認識する受容体(Chimeric Antigen Receptor)を、ウイルスベクターなどをもちいて遺伝子導入することでがんの排除能を高めた医薬品で、一部の血液がんを対象としてすでに日米欧で承認されており、近年その大きな効果が臨床的に証明された細胞療法です。現在全世界で更なる臨床効果を狙った次世代の CAR-T 細胞療法の開発が行われており、血液がんの分野ではその効果が確認できる疾患対象範囲が広がりつつあるものの、固形がんの分野においてはまだ途上です。

固形がんを対象としたCAR-T細胞療法の難しさは、腫瘍微小環境と呼ばれる免疫細胞の機能が抑制される固形がん特有の環境下で、CAR-T細胞が持続的な抗腫瘍効果を発揮しなければならない点にあることが知られています。

中沢洋三教授らの非ウイルス遺伝子導入法と、今回、新たに共同で創製されたCAR-T細胞培養法(特許共同出願中)により作製したCAR-T細胞が、従来のウイルスを用いる方法で作成したCAR-T細胞と比較して、抗腫瘍効果が持続すると示唆され、免疫抑制的な腫瘍微小環境でも持続的な活性を有し、固形腫瘍に対して有効であることが期待されます。

信州大学が準備を進める医師主導治験の対象となる骨肉腫は、小児や若年者に発生する代表的な小児がんのひとつで、近年の治療の進歩は目覚ましいものの、再発例や遠隔転移例などの重篤患者の治癒のためには新たな治療薬の開発が待ち望まれています。

アメリカでは、このような難治性骨肉腫に対し、従来のウイルスベクターを用いた遺伝子改変法で作製されたHER2-CAR-T細胞による臨床試験が行われており、一部完全寛解を含む有望な結果が報告されています。

ブライトパス・バイオは、HER2抗原というCAR-T細胞療法においてすでに臨床コンセプトが確認された抗原に対して、より高い効果が期待されるプラットフォーム技術を組み合わせた今回のCAR-T細胞療法が、有力な治療の選択肢として広く臨床的に活用されることを目指しこの開発に参画することになります。
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