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医療再生 日本とアメリカの現場から (集英社新書) | 大木 隆生 |本 | 通販 | Amazon

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大木隆生とは?

大木 隆生(東京慈恵会医科大学 外科学講座 教授)

大木 隆生(東京慈恵会医科大学 外科学講座 教授)

1962年8月12日生まれ。東京慈恵会医科大学卒業。医学博士。アルバート・アインシュタイン医科大学附属病院血管外科部長、同大外科学教授を歴任し、東京慈恵会医科大学外科学講座主任教授現職。
大木医師は、アメリカで医療に携わり、2006年に日本に帰国した。その年はちょうど「医療崩壊」が大きく報じられ、医療に対するバッシングが盛んに行われていた。医療事故が1990年代から続き、医療への不信感が高まっていた。そしてその際に、アメリカと日本の医療現場を比較して、日本の医療を批判する論調が多く見られたが、両国の医療現場を知悉していた大木医師は言う。

「日本で紹介された医療現場は一部の富裕層向けのものであり、すべての人に開かれたものではない」と。

その後、2015年には「医療崩壊」の波は少しずつおさまってきたとされるが、いまだに医療の現場は人手不足です。そんな中、東京慈恵会医科大学附属病院で、医療現場の改革を進める、大木医師の『医療再生 日本とアメリカの現場から』を紹介し、医療再生の方途を探ります。

第1章 米国医療の光と影

日本メディアがゆがめた実像

 大木医師は、「日本の保険は国民皆保険となっているけれど、アメリカの公的保険は65歳を過ぎた高齢者と障害を持つ人用のメディケアと、一定の条件を満たしている低所得者用のメディケイドの二つです。アメリカ人のうちでこの保険に入っているのは2割ほどとなっている。普通の人が医療保険を利用するには、個人で民間の保険に加入するしかないのです。

しかし、この医療保険がとても高額で、最も下のコースでも年額30万円にもなります。アメリカ人のやはり2割は保険に入れていない」という現実を紹介します。

しかも、1泊2日の盲腸手術を受けるとなんと300万円の医療費を請求される国なのです。こうした事実を報道せずにアメリカ型医療を理想とメディアは報道していたのです。

弱者を守れない保険制度&病気になったら自己破産

 オバマ大統領により2014年から医療保険制度(オバマケア)が導入され、国民皆保険への道を探っています。それまでは、低所得者向けのメディケイドでさえ、年間におよそ90万円ほどの収入があると公的保険には加入できませんでした。さらにその保険で受けられる医療は、最低限のもので、出産ならば正常分娩から、12時間以内に退院しなければならないという決まりなのです。

アメリカの医療保険会社は、被保険者への支払いを「メディカル・ロス」と考え、保険料の支払いをできるだけ少額にしようとしています。保険に加入している人を診る場合には、医療行為の内容をすべて保険会社に送付し、許諾をもらわなければならないのです。もし保険会社の許可を得られなければ、医療費はすべて実費になります。

経営手腕を問われる幹部ドクター

 アメリカの大学病院では、看護師と麻酔科医、放射線科医、病理医を雇いますが、他のスタッフはすべて診療部が雇うことになっています。各診療部が、病院に場所を借りて、独自に経営をしているという形態なのです。大木医師は2002年から、アインシュタイン大学病院の血管外科部長として、経営を任されていたことから、こうしたことに通じており、ドクターズフィー(手術代)で各診療部が運営されていることを教えてくれます。

 実は、保険会社との折衝も診療部が雇った事務員が行います。ところが、保険会社はできるだけ支払いを少額にしたいために、日増しに、医療行為の交渉が複雑化していきます。そのため、診療部の人件費などもどんどん上がっていくのです。
 アメリカの医療費は、300兆円にのぼりますが、そのうち70兆円はこの事務員らへの間接経費として消えていくのです。

通報と内部告発は市民の義務&相互不信の患者と医者

 アメリカの看護師は、日本の看護師と異なり、医師の補助・医師と患者をつなぐ役割に加え、ペイシェント・アドヴォケイト(患者の代理人)をしています。看護師は、その知識と経験を生かして、医者の医療行為が適切かどうかをチェックすることができます。

医療ミスがあった場合も、隠蔽することなく、きっちりと告発することが義務と考えられていて、医師はあまり無茶なことができないようになっています。ここには、医者への不信感が見られると大木医師は書きます。さらに、保険会社による査定も同様に不信感によるものだと。
 アメリカでも日本と同じような「パターナリズム」に基づいた医療が行われていたことがあり、「インフォームド・コンセント」が普及しました。実はこれ「医療行為の内容や起こりうる合併症や副作用は事前に説明し、了解をとりましたので、何が起きても自己責任ですよ」という訴訟回避のための、便法でもあるのです。訴訟社会のアメリカ医療現場で生まれた「いい訳」の文化な訳です。むしろ一層の不信感増大が起きたと言うのです。
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