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株式会社ニコンと澁谷工業株式会社は、共同で再生医療製品製造用自動監察機能付インキュベータ(庫内の温度や湿度、CO2濃度などを一定に保ち、細胞等を培養する装置)の開発に成功したと2016年12月13日、発表した。
装置本体

装置本体

本共同開発はAMED(国立研究開発法人日本医療研究開発機構)が主催する「再生医療の産業化に向けた評価基盤技術開発事業(再生医療の産業化に向けた細胞製造・加工システムの開発)」の支援を受け、大阪大学大学院工学研究科生命先端工学専攻生物コース生物プロセスシステム工学研究室(紀ノ岡正博教授)の指導のもとで行われた。

再生医療品の製造は現状、特定作業者の技術頼み

再生医療の産業化を実現するためには、iPS細胞を始めとする再生医療製品を安全かつ安定的、そして安価に、たくさん製造するシステムが必要となる。

しかし、再生医療品の製造は特定の作業者の手作業で行われており、量産化にも、低コスト化にも程遠いのが現状だ。

また、細胞培養は標準化(誰が作業しても同じモノができるようにする仕組み)が確立されておらず、作業者個人の経験や技術に頼っている面が大きい。

以上のような問題を解消し、特定の作業者の主観的な判断を排除した自動監察機能を持つインキュベータを構築すべく、行われたのが本共同研究だ。

同装置のどこが新しいのか?

最大の特徴は、iPS細胞など各種細胞の観察画像を解析し、未分化状態の細胞数や増殖速度、細胞品質などを培養環境下で評価する“自動監察機能”を内臓している点。

これにより前述した“作業者の主観的判断”に依存することなく、培養細胞を評価することが可能となる。

その機能を支えているのが、ニコンの「細胞観察技術」と「細胞画像解析技術」、そして澁谷工業の「無菌化技術」だ。

ニコンが蓄積してきた幹細胞(自己複製力+さまざまな細胞に分化する能力を持つ特別な細胞。胚性幹細胞=ES細胞、成体幹細胞、iPS細胞などが存在する)の画像処理技術を搭載し、培養中の細胞を傷つけることなく状態評価ができるようにするとともに、高精度の細胞品質管理を可能にしたという。

と同時に、両社が「先見的かつ独創的」と胸を張る、フレキシブルモジュラープラットフォーム(fMP)インターフェイスを採用。インキュベータ庫内を無菌環境に保ったまま着脱し、細胞製造工程で使用されるさまざまな周辺装置へと細胞を受け渡す機能を持たせたことにより、将来的にも再生医療製品製造にさまざまな面で貢献できるとしている。
観察ユニット

観察ユニット

まず大阪大学で実証実験を支援

同インキュベータは今後、本共同研究の指導に携わった大阪大学の中にあるSCA(幹細胞評価基盤技術研究組合;平成23年2月設立。再生医療の産業化に向けたヒト幹細胞の製造・加工システムの開発を行っている)の集中研究所に設置され、実際の細胞培養における実証実験を支援。それによって両社は再生医療製品の実用化に向けた研究開発を推進するのと並行し、同装置の普及に努めるとしている。


研究者と企業がタッグを組み、産学連携で新たな装置を作ったということは、研究者の「こういう機能が欲しい」というニーズが反映されたものができたということ。この新たなインキュベータの登場は、日本の再生医療の産業化を急加速させるかもしれないという可能性に、期待がふくらむニュースと言えるだろう。

引用・参照

http://www.nikon.co.jp/news/2016/1213_01.htm
http://www.shibuya.co.jp/outline/ir/NewsReleasePDF/news20161213-1.pdf

株式会社ニコン http://www.nikon.co.jp/index.htm
澁谷工業株式会社 http://www.shibuya.co.jp/
SCA(幹細胞評価基盤技術研究組合) http://www.scetra.or.jp/
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