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早期発見――。
病気に対抗する有効な手立ての1つは、これに尽きるといっても過言ではないだろう。

いまだ完治のための治療法は見つかっていないアルツハイマー型認知症も、その例外ではない。早期発見ができれば、投薬などで症状の進行を抑えることが可能だからだ。

しかし、下のイメージ図を見ればわかるように、症状が軽度の場合には老化による物忘れとの区別がつきにくく、見過ごされてしまうケースも多い。
アルツハイマー型認知症の経過

アルツハイマー型認知症の経過

いつのまにか始まり、緩やかに進行していくのが、アルツハイマー型認知症の特徴。人によって進み方や症状の現れ方は様々だが、大体このような経過をたどるとされている。

認知症「いっしょがいいね」を支えるガイドブック(監修:医療法人社団緑成会 横浜総合病院臨床研究センター センター長 長田 乾 先生)より

問題は、決定打となる診断方法が確立されていないこと

2017年1月現在、アルツハイマー型認知症の検査方法は、大きく分けて「知能検査」「血液や尿の検査」「画像診断」の3つが存在する(詳細については記事末尾参照)。

なかでも、“脳の内部の状態”を確認できる「画像診断」は有用な手法であるとされているものの、現存する「画像診断」のなかに、単独で「これはアルツハイマー病だ」と早期に確定できる診断法は確立されていない。

北大と日立が新たな検査法の研究開発を開始

そんな背景のなか2017年1月24日に、国立大学法人北海道大学と株式会社日立製作所が、「認知症の早期診断・早期治療のための医療機器開発プロジェクト」をAMED(国立研究法人日本医療研究開発機構)から受諾した、と発表。

認知症の日常診療において、画像撮影に多く使われるMRI(*)検査の新手法を研究開発するという。

*MRI;強力な磁石と電波を使って人体の断面像を得る検査。同じく断面像を得る手法であるCTスキャン(レントゲン照射ののちコンピュータで立体画像を作り出す)と比較して、「X線被爆がない」「様々なコントラストの画像が得られる」という利点がある。一方、検査時間は検査箇所など各種条件にもよるが、一般的にCTが10~15分であるのに対し、MRIは30~40分ほどと長くかかる。

日立が開発した新しい計測方法QSMとは?

アルツハイマー病におけるMRI検査では、脳の断面を撮像し、形態変化(萎縮など)から診断を行う。

その評価方式には、画像から脳の特定部位の萎縮の程度を客観的に評価するVBMというものが存在し、軽度認知障害(認知症の前段階の軽度認知障害)の診察や、アルツハイマー型認知症への移行予測に関して一定の有用性が報告されている。

しかしながら、VBMのみで認知症だと診断を確定することは難しいのが現状だ。
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アルツハイマー病患者では、本能的行動や記憶に関与する海馬が萎縮する。

東京医科大学「アルツハイマーの画像診断」より
一方で、アルツハイマー病では大脳基底核が偏桃体などの特定領域に“鉄”が沈着し、磁化率変化が生じることが報告されている。

そこで日立は2011年冬から、鉄濃度定量の分布を解析するQSMという新しいMRI計測技術の開発を行ってきた。

この日立が開発した新技術QSMと従来のVBMを組み合わせ、「鉄濃度定量の分布」と「脳の萎縮」の両方をカバーするハイブリッド撮像・解析が同時に行える、新たなMRI検査法を開発するというのが今回のプロジェクト。

より高い精度での検査ができるようになり、軽度認知症段階での診断、アルツハイマー病への移行予測など、認知症の早期発見が可能になると、北大と日立は見込んでいる。

さらに、撮影時間短縮による患者負担の軽減も目指す

前述したとおりMRI検査は比較的、撮影に時間がかかるのが一般的であり、今現在、VBMに必要な高精細3次元T1強調像(水分以外を強調する画像。身体的な構造を見やすいのが特徴)と、QSMに必要な磁化率強調画像という2つの画像を取得するには、撮像時間が10分以上、解析時間が約20分、必要となっている。

と同時に、患者の体動によって撮像画質に劣化が生じてしまうことから、検査を受ける人は10分以上、検査中は静止していることが求められる。

この患者負担を軽減し、撮像画像の高精度化を図るべく、検査時間も短縮したいというのが、研究チームの考えだ。

具体的には撮像時間を5分前後へと半減。とともにQSMとVBMのハイブリッド解析法を開発することで、解析時間も大幅短縮することを目標とするという。

2019年のプロジェクト終了後、5年以内の製品化を希望

これらの撮像法や解析法は北海道大学病院にて臨床研究を行いながら開発を進められるとともに、その他のMRI検査法の結果を組み合わせ、撮像画像を総合的に解析することによって、

・健常人と軽度認知障害患者の鑑別診断
・健常人とアルツハイマー型認知症患者の鑑別診断

などにおける、さらなる解析精度向上も図るそう。

北大病院での臨床研究は既に2016年11月からスタートしており、2019年3月まで継続。
日立はその後5年以内にQSMとVBMのハイブリッド撮像法を搭載したMRIシステムを製品化し、北大病院では認知症の早期診断法の確立と検証を進めたいとしている。





●引用・参照●

http://www.hitachi.co.jp/New/cnews/month/2017/01/0124.pdf

http://www.isshogaiine.com/about/alzheimers.html
http://rad.med.hokudai.ac.jp/care/mri/

【アルツハイマー型認知症の診断方法】
http://www.skincare-univ.com/article/009673/
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