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血液でがん診断ができる、がん細胞捕捉システムの大規模臨床試験が日米共同でスタート

日本の化学メーカー日立化成と、米国の大規模がんセンターThe University of Texas MD Anderson Cancer Center(テキサス州立大学 MDアンダーソン癌センター)が2016年6月27日、4年間の戦略的提携を結んだ。

内視鏡や針を使用して腫瘍組織を採取する従来の生検に比べ、格段に小さな患者負担で迅速ながんの発見につながり、さらに、腫瘍のゲノム情報を踏まえた適切な治療にも活用できるのが、血液などの体液サンプルを使うリキッドバイオプシー(liquid biopsy;液体生検)という手法。現在、世界中で研究開発にしのぎが削られている。

そのバイオマーカーのひとつであるCTC(Circulating Tumor Cells;血中循環腫瘍細胞)は、腫瘍から血液中に漏れ出して体内を循環する、がん細胞だ。

これまでのCTやエコーといった標準的検査では、がんの大きさが約1cm以上にならなければ見つけられないとされているところを、CTCはがんが1.5㎜を超えた時点で血液中から検出される。従って、そのリキッドバイオプシーの技術確立は、がんの早期発見に大きく貢献することとなる。

ただ、CTCは血液10mlあたり数個から数十個と数が極端に少なく、その検出は極めて難しいと言われてきた。
そんななか日立化成とMD Andersonは、2014年からCTCに関する共同研究を開始。
日立化成が微細加工技術で作成した高細密フィルターを使い、血液からCTCを迅速に捕捉する技術の開発に成功する。

その成果を得て、MD Andersonは健常人の血液にがん細胞を添加した模擬実験を実施。高細密フィルターと、血液自動処理装置および試薬からなるシステムを用いれば、血液中のCTCを90%以上捕捉できることを確認。加えてバイオマーカー候補となる、がん関連遺伝子を検出できることを明らかにした。

そこで、次のステップである大規模臨床試験でも両者が協力し、さらなる発展を目指すべく終結されたのが、今回の戦略的提携というわけだ。

具体的には、日立化成が資金とシステムを提供。MD Andersonは2016年5月にスタートさせた大規模臨床試験において、日立化成のシステムを活用するための専門知識を提供するとともに、CTCの遺伝子解析も行うという。

すでに転移性乳がんや前立腺がん、大腸がんに関しては、予後予測マーカーとしての価値が認められているというCTCだが、日立化成とMD Andersonの臨床試験は転移性乳がんと非小細胞肺がんに対し、400症例規模での実施となる。

その結果、日立化成のシステムで捕捉したCTCが、がんの遺伝子解析において臨床的に有効であることが確認されれば、転移性がんの早期スクリーニング(無症状の段階でがんの可能性を精査する)や、患者個人に合わせた抗がん剤の選定または抗がん剤の開発など、広い範囲でCTCの臨床応用が進むことが期待できるとのこと。

なお、今回の大規模臨床試験を経て、日立化成はCTC由来のバイオマーカーをがんの診断に適用させることを目指しており、2021年までにがん診断市場に参入する考えを表明している。

「血液でがん診断」、日立化成とMD Anderson:医療:日経デジタルヘルス

「血液でがん診断」、日立化成とMD Anderson:医療:日経デジタルヘルス
 がんなどの疾患を血液から診断する「リキッドバイオプシー」で、日立化成と米MD Anderson Cancer Centerが手を組んだ。2016年6月27日、血中循環がん細胞(Circulating Tumor Cells:CTC)を捕捉する高精細フィルター、および血液自動処理装置と試薬からなるシステムの開発・評価について両者は、4年間の戦略的提携を結んだ。日立化成はCTC由来のバイオマーカーを診断に適用することを目指し、2021年までにがん診断市場に参入する考え。

VIEWS

マーカーとは何か? ある疾患をヒトが抱えた時にその要因を駆除しようとします。駆除するために薬物を体内に投入します。投入した薬物は要因に対してだけでなく駆除する必要のないものにも影響を与えます。抗がん剤などはその典型的な例になります。

そこで善玉と悪玉見分ける。駆除しなくてはいけないものその悪玉をわかるように目印をつけること。それがマーカーだと考えればいいかと思います。

「何が悪いのかを特定する」マーカーはそうしたことができる存在になりつつあります。悪いところだけに有効な成分を投入できるようになるわけです。

そのことによっていわゆる「副作用」と呼ばれる本来の駆除とは関係のない体内の成分に悪い影響を与えることがなくなるわけです。一つの病気だけでなく複数の病気を抱えている患者さんに他の病気に悪影響を与えることなく治療ができることも可能になるわけです。

血液の成分に対してはこれまでなかなかマーカーの開発がなされてきませんでした。ここへきて遺伝子情報の治療なども現実化してきて血液にマーカーをうてることがとても大事になってきました。

例えばお母さんの体内にはすでにお腹の中のお子さんの遺伝子が微量ですが流れていることがわかってきたんです。その遺伝子にマーカーをつけることで生まれてくるお子さんのエラーが発見できることになりつつあります。

遺伝子レベルの治療のある部分は血液のマーカーの技術なくして進まないと考えていいと思います。

取材協力

黒河 昭雄(くろかわあきお)
東京大学政策ビジョン研究センター(医療イノベーションプロジェクト)、明治大学国際総合研究所、應義塾大学SFC研究所にて医療政策の研究に従事
https://www.facebook.com/akio.kurokawa.148
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